大物FA選手落合さんのお世話ががりに
1994年、巨人に超大物FA選手が入団しました。現中日GMの落合博満さんです。当時でもプロ16年目・40歳の大ベテラン。ようやく一軍に定着した入団4年目・22歳の僕など小僧っ子です。
すぐに僕が落合さんの「お世話係」を務めることになりました。一軍には3歳年下でまだ19歳の松井秀喜もいましたが、こういう役目はいつも僕に回ってくるのです。
シーズン中は、球場に着いたらすぐに落合さんのバットとグラブをベンチの所定の位置に並べることから始まります。ボール回しに使うニューボールをファーストミットに挟んでおくことを忘れてはいけません。落合さんにそうしろと言われたわけではありませんが、このボール回し用の球は東京ドームなら3イニングに1回、甲子園や広島など土のグラウンドの場合はイニングごとにニューボールに取り換えて落合さんに渡しました。僕なりの気遣い。自分で言うのもなんですが、妙に気が回る僕は、最高の「世話係」だったはずです。
新幹線で遠征に向かう際には、新横浜駅のホームの売店で落合さん用の週刊誌を5冊買うのも大事な仕事。4冊が週刊誌、1冊が漫画雑誌というのがリクエストでした。それをグリーン車にいる落合さんに渡すと、「これは見た、これも見た」とはじかれるなんてことも。さすがにそこまで僕は分かりませんよ、という言葉をのみ込み、「すいません」と謝りながら、あとで、なんで頭を下げてんだろ、と苦笑いしたことは1度や2度じゃありませんでした。