研究者に聞く 「ミトコンドリア」でマラソンは速くなる?
――ということは、ミトコンドリアが増えればエネルギーも増産されると。
「そうです。持久能力の指標として最大酸素摂取量というものがあります。これは体重1キロ当たり、1分間に最大でどれだけの酸素を吸えるかということを表している。言い換えれば、どれだけ酸素を吸ってエネルギーにできるかということなのです。その時、吸った酸素を処理しているのがミトコンドリアです。ミトコンドリアが増えれば、最大酸素摂取量が上がるので持久力が向上します」
――だからマラソン選手に効果があるわけですね。ならば、ミトコンドリアはどのように増やせるのですか。
「ミトコンドリアはエネルギーを作る器官ですから、細胞がエネルギー切れになってきたら増やそうという性質がある。そのために、意図的に筋肉に飢餓状態をつくるのです」
■「トラック選手が持久力をつければ」
――筋肉が「腹ペコ」になると勝手に増えると?
「増やし方は指導者の経験や知識によっても違ってくると思います。例えば、早朝に食事をしないで走り続ける。グリコーゲン(肝臓・筋肉などに含まれるエネルギー源)もない状態にしてミトコンドリアを増やしている者もいる。また、短期間に高強度の運動をすることも効果がある。例えば、30秒間全力で走り、休息してまた30秒間全力で走る。このようなインターバル走を数本繰り返せば、数週間でミトコンドリアは増えますから最大酸素摂取量はアップします。インターバルトレーニングのタバタプロトコル(*)を採用している陸上部もあります」