<5>東京五輪・パラリンピックに向け勝利至上主義の再考を
アメリカンフットボールは、自らの専門性を発揮できる知的格闘技である。大男同士が激しくぶつかる横を小柄なRB(ランニングバック)が俊足を生かして駆け抜けていく。華麗なパスを繰り出すQB(クオーターバック)に襲いかかるディフェンス陣、勝敗の行方を託されるキッカー。緻密な情報戦のために、データの収集や分析をするスタッフもいる。故障者が出れば、救護にあたる女子部員の出番となる。
魅力あふれるアメフトが日大の悪質タックル問題で苦境に立たされている。日本アメフト協会の殿堂入りメンバーに名を刻む関学大OBの古川明さん(87)は、どう思っているのだろうか。
「ひどいですな、あのプレーは。初めて見ました」
半世紀以上、アメフトの普及と発展に貢献してきた重鎮の怒りは、この一言に凝縮されていた。
フィールドの整備、審判の育成とレベルアップに努力を重ね、孫ほど年齢の差がある若手記者にも「スタッツ(公式記録)」を配る姿が目に焼き付いている。カレッジフットボールを文化にまで育て上げた功労者である。