男子マラソン低迷 箱根駅伝“悪者論”に名物TV解説者が反論
■高卒ランナーがいなくなった
――箱根駅伝がマラソンをダメにしているという人がいますね。
「実に多いですね。今回、本を出させていただいた理由もその辺りです。はっきり言って、箱根駅伝は利こそあれ害なんかないし、むしろ20キロ走はマラソンにいいくらいです。そもそもそういう問題の立て方がおかしいんでね。時代の移り変わりを考えないと迷路にはまる。箱根駅伝は1世紀前からほとんど変わっていませんが、大学は変わった。戦前に大学に行くなんて人は珍しかったんですよ。1960年代の私たちの頃も高卒が大半で、高校―実業団―(たまには)大学という学歴で、高校―大学―実業団ではなかった。マラソンは究極の持久走で、拘束時間が長い。まして4年制の大学生活はマラソンの準備時間にならない。“マラソン日本”をつくったのは高卒の実業団選手だった。山田敬蔵、重松森雄、佐々木精一郎、君原健二、寺沢徹、円谷幸吉、宗兄弟、中山竹通、森下広一、みなそうですね。瀬古君は天才ですから例外で(笑い)。彼らは大学に行く代わりにマラソンに必要な心身のスタミナを蓄えた。いまはほとんど大学に行きます。大学を出てからマラソンを走れといっても時間は残っていないんです。昔のオリンピックのマラソン代表はほとんど高卒、それが北京大会以降の3大会はすべて大卒。これは大卒が強くなったんじゃなく、高卒ランナーがいなくなったからです。下積みの質も量も違います。時代が変わったのにメカニズムを無視して現象だけとらえるから、箱根駅伝が悪いなんて答えになる。言いがかりですね、はっきり言って」