生き証人3人が語る 平成5年「ドーハの悲劇」の真実<後編>
最終予選初戦のサウジアラビア戦はスコアレスドロー。2戦目のイラン戦は、三浦泰の背後の左サイドを何度も何度も攻め立てられ、結局は1―2で敗退した。ここでオフト監督は決断した。3試合目の北朝鮮戦に勝矢を先発させ、4試合目の韓国戦、最終戦のイラク戦と3試合連続で勝矢をピッチに送り出した。そして――。イラク戦のロスタイム。イラクの左CKは、予想外のショートコーナーだった。勝矢が対応しなければならないエリアで懸命に右足を伸ばし、何とかクロスを阻もうとしていたのは左FWの三浦カズだった。
六川「イラク戦の後半途中から<日本に悪い流れがきている。日本のゴール側で何か起きる>と本能的に悟り、終盤になってタッチライン際をテクテク歩いていき、日本ゴールの左側に陣取りました。終了間際のショートコーナーは意外でしたし、ボールを受けた選手が切り返したのも意外でした。そこにいたのが三浦カズだったことにもビックリしました。ともあれ三浦カズの足が、もう数センチ長くてボールに当たっていたらクロスは上がらず、日本を奈落の底に突き落とすヘディングシュートもなかった。個人的にも貴重な一枚となったわけですが、試合中の移動などで露出がズレていたことが悔やまれます」