私立と公立の格差拡大でドラマ消滅…無観客センバツの弊害

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授業なければ一日中練習ができる

 こういった私立優位の傾向に拍車がかかると前出の監督はこう続ける。

「私立で野球部の練習を認めているところは休校で授業がなくなっただけに、極端な話、朝から晩までビッシリ練習できるわけです。知り合いの私立の出場校の関係者なんて『これで一日中練習ができる』って、むしろ喜々としてましたから。大会直前の重要な時期だけに練習三昧の私立と、一時的とはいえ練習ができなかった公立の差は大きいですよ」

 ただでさえ私立有利の傾向を、無観客試合という形態が後押しする。別のある強豪校監督が「番狂わせが起きにくいというか、甲子園にいる魔物も出なくなるんじゃないか」と苦笑しながらこう言う。

「甲子園のファンは基本的に判官びいき。公立校とか、練習環境に恵まれない雪国の学校に肩入れして応援する。ときに地鳴りのような大歓声となって、チームのムードをもり立てるケースがよくあるのです。球場全体が異様な雰囲気に包まれると、審判のジャッジにも影響する。勝負はゲタを履くまでわからないと言いますが、そうやって番狂わせが生じたケースは一度や二度じゃない。けれども、スタンドに球児の家族や応援団すらいないとなると、異様なムードになりようがありませんからね」

 センバツではないが07年夏の決勝で0―4と負けていた佐賀北(佐賀)の逆転劇、09年夏の決勝で4―10から9―10まで追い上げた日本文理(新潟)の粘り、16年夏に東邦(愛知)が八戸学院光星(青森)との7点差を引っ繰り返したようなドラマは起きにくい。実力通りに決着がつくというのだ。

■甲子園練習なしの波紋

 甲子園練習がなくなるのもデカい。時間にしてわずか20分程度だが、本番と同じ舞台でファウルゾーンやクッションボールの処理を確認できる甲子園練習は、意外にも重要だという。

 春夏通じて初出場の加藤学園(静岡)、鹿児島城西(鹿児島)、平田(島根)はもちろん、私立に比べて練習不足の公立校にとっては大きなハンディになる。

 今回、公立の出場校は32校中7校。そのうち明石商(兵庫)は昨年春から2季連続4強、県岐阜商(岐阜)は秀岳館(熊本)を率いて春夏4強入り3回の鍛治舎巧監督が指揮を執る。明石商は5日から練習を再開するし、県岐阜商も含めてスポーツマスコミは2校を高く評価しているが、果たして公立のハンディを乗り越えられるのか。

 この日の会見で、高野連の八田会長は、出場校の練習に関して私立と公立に格差が出ているのではないかという点をどう受け止めているかという質問に、「各出場校にもお知らせした。内々にコンタクトは続けてきたが、教育委員会や校長の結論は重視させていただきたい。公立7校がどう対応しているかは聞いているが、これから校長は教育委員会とお話しになるのではないか」と答えた。

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