プロ野球はこのまま開幕できますか?選手会事務局長を直撃

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 プロ野球は本当に開幕できるのか。今月1日、NPBと事務折衝を行った日本プロ野球選手会は、公式戦縮小によって影響を受ける選手の出場選手登録日数などの問題について、「かなり大きな開きがある」(森忠仁事務局長)と指摘。開幕延期を求める可能性を示唆した。6月19日の開幕に向け、予断を許さない状況が続く中、選手会の森忠仁事務局長を直撃した。

■6.19開幕を巡って選手が抱える不安と本音

 ――選手会は選手の出場登録日数に関し、「大きな開きがある」とした。

「1シーズンの日数の問題は、FA権などさまざまなことが絡んできます。たとえば通常のシーズンであれば、1シーズンは約190日前後ある全出場登録可能日数の約4分の3に当たる145日を満たせばいいことになっていますが、(120試合制の)今季は最初から全出場登録可能日数が145日に満たない(最大141日)状況。このままだと誰も1シーズンを満たさないことになってしまう。そこで計算上、1試合の価値を上げ、通常のような(143試合、190日前後での)形で計算してもらいたいと考えています」

 ――現行のFA制度の問題もある。

「年間を通して最大190日前後の出場登録日数がある中で、1年間を通して出場登録されても145日目以降の出場登録日数はカットされる。今年、実数で計算するというなら、今までカットされた分はどうなるのか、ということになります」

 ――NPBの選手関係委員長である阪神の谷本副社長は「1試合出場の選手も、全試合出場の選手もすべてを1・何倍にするというのは違うのではないか」と言っている。

「出場試合数によって違いがあるということ自体、理解ができません。FA権を今年取得する選手の問題だけでなく、出場登録日数は来年にも反映される。すべての選手に対し、平等にやってもらわないと。出場登録日数の問題は選手会として最も重視していますし、計算上の問題なので、球団の新たな金銭的負担を発生させるものでもありません」

 ――日数の問題は出来高や追加参稼報酬(1600万円)にも関わってくる。谷本副社長は「野球協約と統一契約書、出来高の問題も含め、シーズンが始まる前に確認してもらったことはきっちりと履行する」と話しているが、出来高の問題は選手も困っているのでは?

「『シーズンが始まる前に確認したこと』が仮に、昨年の契約更改で決めたことを指しているとすれば、契約は143試合を想定しており、今季はそれが履行できないのですから、今季の日程に合わせないといけないはず。安打数、勝利数など、積み重ねる数字に関しても、全部で143試合あるという前提で、そこからの割合で決められている。試合数が減れば、減った割合で調整しないと、シーズン前から絶対に達成できないケースが出てくる。選手からも『出来高に関して話し合いをしたい』という声は出ています。最初から出来高が得られないという前提で開幕すれば、せっかく目標達成のためのモチベーションを持たせるためにつくられたはずのものなのに、それが持てない。チームとしてもいいことではないと思う。出来高の扱いは各球団ごとの対応になると思いますが、それぞれの球団の裁量はあったとしても、対応する球団と対応しない球団が出てくるのは良くない。もともと選手は、ドラフト制度上、自分で球団を選んで入っているわけではありません。12球団平等に対応してもらいたいという考えです」

 ――球団のオーナーは収入減を危機的にとらえている。今年の年俸は保障されるのですか?

「それについては、交渉のことなのでハッキリお答えすることはできませんが、さまざまなことが絡んでくると思います。前提として統一契約書や野球協約上、年俸を減額する根拠はありません。今年、各球団の収益が減ることは分かっていますが、この1年間の収益だけで判断するのは難しいと言わざるを得ない。過去何年分の収支状況など球団の経営状態を示すものが出てこないことには、ただ今年は利益がないから、ということでは選手は納得できません」

■「選手の意見が反映されていない」

 ――開幕が6月19日に決定するまでの過程についても、球団側の主導で進められた印象がある。

「もちろん会議の報告などは受けていましたが、あくまで報告であって、選手側がどうしたいか、と意見を求められることはなかった。それまでも選手会としては、たとえばコロナに関する対応など、(NPBが作成中の)ガイドラインを見て気になったところについて要望書を出していました。1月の事務折衝以降、コロナの状況もあったとはいえ、事務折衝の機会を設けてもらえるように働きかけをしていたところ、6月1日にようやく話し合いができた状況です。もちろん、一日でも早く開幕できるのはいいことです。ただ、開幕に向けて準備を進めた5月は緊急事態宣言が地域ごとに解除された時期。練習内容は12球団でかなり違いがあった。異例の事態ということを差し引いても、選手はしっかりと調整できないまま開幕を迎えざるを得ないのが実情です。これは選手寿命に関わってくることですし、単純に早く始めればいいというものではない。万全でないプレーを見せるのはファンに対しても失礼です」

 ――練習再開後は故障者、体調不良者が何人も出ています。

「選手それぞれ調整の仕方があり、無理に合わせようとすると故障など、さまざまなところに影響が出てきます。投手は開幕後しばらく、長いイニングを投げられない状況だと思う。一方で、出場登録の人数を増やす方向の話はありますが、そういったことを選手と話し合いながら、進めるべきです。報告したらいいという問題ではない。今後のこともあります。将来的に別の問題が起きたときにも、きちんと話し合いができるような体制をつくっていただかないといけません」

■消えないコロナ感染リスク

 ――6月3日には巨人の坂本勇人、大城卓三の2選手のコロナウイルス感染が判明しました。

「NPBには、開幕前に12球団の全選手のPCR検査を求めることを検討しています。無症状の感染だったこともあり、選手はいつどこで感染してもおかしくないという怖さ、知らない間に他の人へうつしてしまう怖さを抱えている。選手からも、検査を求める声が出ています。開幕前に選手の状態を知り、クリアな状態で開幕を迎えるのがいいのではないか。もちろん、開幕してからも定期的に検査できれば、より安全にシーズンを過ごせると思います」

 ――16日にNPBと再び事務折衝を行う。15日の選手会臨時大会次第では「開幕延期も言わざるを得なくなる」と発言した。

「合意できないとは考えたくありませんし、誠実に交渉してもらえると思っていますが、これまで話し合いをしていただけなかったのですから、譲れない部分はあります。選手に交渉の経緯を説明し、その反応次第で(延期を求めるかどうか)結論を出さないといけない。試合をするのはあくまで選手。開幕後にも交渉をし続けないといけないことは出てくるでしょうが、開幕をスッキリした気持ちで迎えられるようにするためにも、出場登録日数などの条件がきちんと決まった状態で開幕するのが一番と考えています」

【写真】プロ野球開幕に向け練習試合が始まる

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