欲のない純粋なテレビマンは「商業五輪」を強く批判した
昏睡状態の坂井の顔を見るなり、大声で叫んだ。
「坂井さん、何でこんなところで寝てんだ。この酔っぱらい。起きろ、起きろ、起きろ!」
それに呼応するかのように、坂井の手足が動いた。
大小原は再び叫んだ。
「坂井さん、聖火台はもうすぐだ。ガンバレ!」
大小原は見た。病床の坂井がトーチを手に聖火台を目指す姿を……。
それから半年後の9月10日。坂井義則は眠るように逝った。戒名は「聖則院昭友日義居士」――。
(次回は「64年東京五輪女子バレーボール金メダルの河西昌枝」)
▽さかい・よしのり(東京オリンピック、最終聖火ランナー) 1945年広島県生まれ。66年アジア大会陸上400メートル銀メダル、1600メートルリレー金メダル。68年フジテレビに入社し、報道部とスポーツ部に37年在籍。主にスポーツ番組を手がける。