日本人初最多勝“最右翼”はマー君でもダルでもなくマエケン

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60試合に短縮された今季はタイトル獲得も

 新型コロナウイルスの感染拡大で一時は実施すら危ぶまれた米大リーグが、4カ月遅れで開幕。24日(日本時間25日)には全30球団が今季初戦を迎えた。

 今季はシーズンが短縮され、通常の162試合制ではなく60試合制で実施。当然、タイトル獲得は各部門ともハードルが下がる。複数の米メディアの予想を総合すると、最多勝が8~9勝、本塁打王は15本前後がタイトル獲得ラインになるという。

 今季の日本人投手7人のうち、先発ローテ入りが確定しているのは5人。投打の二刀流に復帰するエンゼルス・大谷翔平(26)はともかく、ヤンキース・田中将大(31)、カブス・ダルビッシュ有(33)、ツインズ・前田健太(32)の3人はタイトルに手が届くのか。

 日本人投手によるタイトル獲得ならドジャースなどでプレーした野茂(1995、2001年)とダル(13年)が最多奪三振の栄冠を手にして以来になる。これまで、13年にダルと岩隈(マリナーズ)がサイ・ヤング賞の最終候補3人に残ったことはあるが、日本人投手は最多勝に無縁だった。

 ア、ナの強豪チームでエース格を務める田中、ダルはタイトル争いの輪に加わりそうか。

 田中は全体練習再開後の7月上旬、フリー打撃に登板した際、打球が頭部を直撃。「軽い脳振とう」と診断され、別メニューで調整してきた。開幕は負傷者リスト(IL)入りして迎えるものの、26日(同27日)にも実戦形式の打撃練習に登板して、今季初登板は31日(同8月1日)のレッドソックス戦が見込まれている。

「田中は契約最終年で、今オフに複数年契約を手にするためにも、上々のパフォーマンスを発揮したいでしょう」と、スポーツライターの友成那智氏がこう続ける。

「脳振とうからの復帰は通常なら1カ月以上を要するものですが、早期復帰が見込まれており、コンディションに不安はなさそうです。序盤から飛ばして、勢いでシーズンを乗り切るはずです。田中にとってのプラス材料は昨季、サインを盗まれて打ち込まれた(3試合で0勝1敗、防御率24・75)レッドソックスの戦力ダウンが著しいことです。エース左腕セールがトミー・ジョン手術で今季絶望、昨季19勝の2番手左腕ロドリゲスはコロナに感染して復帰は微妙な状況です。崩壊状態の先発陣に加え、昨オフには18年のMVPでリードオフマンを務めてきたベッツをドジャースに放出して打線も迫力がなくなった」

 今季の田中は開幕当初こそ戦列を離れるが、予定通り復帰してローテ通りなら11試合に登板する見込み。ただし、マイナス材料もある。

「09年以来、11年ぶりのワールドシリーズ制覇を狙うヤンキースは、9月の状況次第ではポストシーズンを見据えてレギュラーシーズン終盤にエース右腕コール、田中の2人をローテから外すはずです。田中は10試合程度の登板にとどまり、チーム事情からタイトル争いに加わるのは厳しいかもしれません」(友成氏)

タイトル獲得経験者のダル 同地区に強力打線

 現役の日本人投手では唯一、タイトル獲得経験のあるダルはどうか。

 今季のダルは投球の幅を広げるため、従来のカーブ、スライダー、スプリットに加えて新たに「スプリーム」を習得した。

 本人によれば「ツーシームとスプリットの間のような球」だそうだ。

 開幕投手は同僚右腕ヘンドリクスに譲り、25日(同26日)のブルワーズとの開幕カード2戦目のマウンドに上がる。

「直球の制球が安定して配球のバランスが良くなった昨季後半の状態から判断する限り、今季もまずまずの投球を見せるでしょう。女房役は正捕手のコントレラスではなく、相性のいい2番手のカラティーニが専属捕手を務めるのも好材料です。ただ、同地区のライバル球団は秋山が加入したレッズを筆頭にブルワーズ、カージナルスと、いずれも打線が強力です。ダルが極端に大崩れするとは考えにくいものの、今季は12試合で5勝3敗、防御率3・50くらいではないでしょうか」(友成氏)

メジャー新記録の援護 好条件が揃う前田

 田中、ダルを尻目に勝ち星を伸ばしそうなのは前田だ。今春のキャンプ前にドジャースからツインズに移籍。新天地では先発3番手を任され、今季初登板は26日のホワイトソックス戦に決まった。古巣ではシーズン途中に中継ぎに配置転換されたが、ツインズではシーズンを通じてローテに定着する見込みだ。

「前田は白星を積み重ねる条件が揃っています。カブスと同じ中地区とはいえ、対戦が多いア・リーグ中地区のロイヤルズ、タイガース、ホワイトソックスはいずれも貧打線。昨季、307本塁打のメジャー新記録を更新した強力打線は健在のうえ、昨季ブレーブスで37本塁打を放ったドナルドソン内野手を獲得した。投手が4失点しても6点取り返す力を持っているだけに、前田は打線の援護に恵まれるでしょう。ドジャースはリリーフ陣の層が厚く、早いイニングでの降板が多かったものの、ツインズのバルデリ監督は100球前後まで引っ張るはずです。前田は4~5失点しても勝ち星が付くケースもあり、巡り合わせが良ければ、12試合で7~8勝、防御率3・20くらいの好成績を収めるでしょう。最多勝の可能性は十分にあります」(友成氏)

 日本人投手初の栄冠は田中でもダルでもなく、意外にも前田が手にしそうだ。  

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