球界トレード市場沸騰 巨人⇔燕が口火切り、西武とDeNAも
「他球団への影響は必至でしょう」(球界関係者)
1日、巨人とヤクルトとの間で、実に44年ぶりのトレードが成立した。巨人は通算36勝のプロ8年目左腕、田口麗斗(25)を放出し、「ポスト坂本」候補としてプロ6年目野手の広岡大志(23)を獲得。ヤクルトは先日、前ソフトバンクのバンデンハークを獲得するなど先発投手不足に悩んでおり、双方の補強ポイントが一致した。
2月27日には楽天(池田)と日本ハム(横尾)のパ球団同士によるトレードも成立している。シーズンオフや、リーグが違う球団同士のトレードならまだしも、開幕直前はサインプレーなどチーム戦略に影響が及ぶため、同一リーグの球団間で話がまとまるのは異例。コロナ禍により、一部外国人選手の来日のメドが立たないことも、トレードを後押ししているようだ。
編成トップを兼ねる巨人の原監督は昨年、沢村拓一(現レッドソックス)をロッテへトレードするなど、12球団最多となる5件の「商談」をまとめた。オフには育成選手を含め大量16人を戦力外にするなど、大胆に動いている。21年度の「第1弾」となる今回のトレードも、移籍市場が活性化することで選手を飼い殺しにしないという原監督の意向が反映されているのだろうが、チームの新陳代謝を目的とした人事は、かねて楽天や日本ハムなどのパ球団が率先してやっていることだ。
■2010年代はわずか2件
とはいえ、今後は“保守的”といわれるセの球団もトレードを含めた編成の動きが活発になるかもしれない。
巨人とヤクルトとのトレードが44年ぶりと話題になったが、これまでセ球団同士のトレードは非常に少なかった。2010年代を見ても、10年の「中日・新井良太⇔阪神・水田圭介」、13年の「巨人・小野淳平⇔広島・青木高広」の2件にとどまっていた(FAによる人的補償を除く)。パ球団関係者が言う。
「今回は巨人からヤクルトへ話を持ち掛けたそうです。以前なら『ファミリー球団』といわれるヤクルトはオファーを断っていたでしょう。投手力不足という苦しい台所事情があるにせよ、これまでにない動きです」
巨人は昨年11月にも、内野手の山本を阪神へ金銭トレード。長い歴史がある両球団のトレードは過去に5度しかなかった。
「各球団の編成担当は今の時期、シーズン途中のトレードを見据えて他球団の視察を行っている。主力に長期離脱を要する故障者が出た場合、応急処置的にトレードが行われることもあるが、今年は外国人選手の入国問題も抱えている。さらに、巨人が率先して動くことで、フロントに対するファンやメディアの目も厳しくなる。負けが込んだり、故障者が続出しているにもかかわらず、補強に動かないとなれば、批判の対象になりうるからです。今年はますます、球界全体でトレードが増える可能性があります」(前出の関係者)
巨人を巡っては早くも、トレード「第2弾」が行われるとの見方もある。強肩がウリである捕手の小林誠司(31)が交換要員として噂に上っている。
今年も赤字経営
トレードが増えるのは、球団経営の問題とも無関係ではない。
昨季はコロナ禍により観客動員が制限され、各球団は軒並み、大減収となった。3月のオープン戦から12球団は有観客開催を行うが、当分は収容人数に制限がかけられるのは確実。2年連続の減収は避けられそうにない。球界OBがこう話す。
「例えば巨人は昨年、コロナ禍で50億円ともいわれる損失を被ったそうです。しかも、ポスティングによるメジャー挑戦を目指していた菅野が残留を決断したことで8億円の年俸が必要となり、数億円程度が見込まれていた譲渡金も入ってこない。『資金力のある巨人なら、その程度の追加費用は痛くもかゆくもない』と言う人もいますけど、巨人は東京ドームの株式取得など、人件費以外の出費も抱えている。巨額の損失が続けば、球団の存続にも関わってくる。年俸7000万円の田口と、年俸1600万円の広岡による“格差”トレードには、経営の問題もはらんでいるとみています」
■西武、DeNAの動向
経営が苦しい球団の中には、巨人が田口を放出したように、年俸5000万円前後の中堅選手を放出し、年俸が安い若手有望株や投打のバックアップ要員を獲得したり、金銭トレードによって人件費を浮かしたりするケースが出てくるかもしれない。
球界関係者が言う。
「助っ人問題で言えば、大きな影響を受けているのは西武とDeNAです。現時点で西武は右腕のギャレット1人だけで、DeNAに至っては1人も来日できていない。西武は助っ人メヒアとの契約延長が合意しましたが、DeNAは年俸4000万~5000万円程度の選手が多い。高田GM時代はトレードに積極的だったし、動きがあっても何ら不思議ではありません」
今季開幕まであと3週間。選手は突然のトレード通告に戦々恐々としながら、調整を進めることになりそうだ。