【新人王候補の素顔】燕・奥川は壁にぶち当たるたびに進化
奥川恭伸(ヤクルト 19歳・2年目)
高卒2年目ながら、開幕ローテ入り。球団OBからは「時期尚早だ」という声も出ているものの、むしろぶつかった壁の高さに比例して進化するのが奥川という投手だ。
星稜高校の林和成監督は「奥川は高校時代から仲間と対戦相手に恵まれました」と、こう続ける。
「1年の秋季石川県大会の決勝戦で、日本航空石川に5回途中8失点とメッタ打ちにされた。当時の航空石川打線は全国でもトップクラス。試合はウチが逆転勝ちしましたが、『こういう相手を抑えなければ甲子園には出場できない』と肌で感じたのでしょう。それでも2年の春の時点ではまだまだ。同年の夏の甲子園で済美に逆転負け。このとき、先発は奥川だったんですが、足のけいれんで4イニングしか投げられなかった」
林監督は「奥川はああ見えて男気のある性格ですから」と、さらに続ける。
「自分のために……という欲は薄いけど、『誰かのため』に力を発揮できるタイプ。済美戦で負けたときは、3年生の先輩を勝たせられなかったことを本当に悔やんでいた。そうした悔しさをバネにできるのが奥川の強さ。日本航空石川や済美、履正社、智弁和歌山など強敵と戦うたびに一皮むけていった。ゾーンに入ったときの集中力は恐ろしいほど。私でも声をかけるのをためらうくらいです」