菅野辞退で侍Jは金どころかメダルに黄信号…ライバル国の日本プロ野球助っ人が難敵に
東京五輪に出場する侍ジャパンの代表メンバーに内定していた巨人・菅野智之(31)が、コンディション不良を理由に出場を辞退したことで、暗雲が立ち込めている。
菅野は18日ぶりに先発した1日の広島戦で今季最短の3回途中4失点でKO。2試合連続で3回まで持たなかったのはプロ9年目で初めてだった。今季は3月に足の違和感、5月に右肘の違和感で離脱していた。昨季は常時150キロを超えていた直球の最速は145キロ。本調子とは程遠かった。
これで広島・会沢、巨人・中川に続き3人目の出場辞退となった。特に菅野と絶対的セットアッパーの中川は、侍ジャパンを率いる稲葉監督の生命線だった。28日の五輪初戦まで1カ月を切ったところで、菅野はギリギリまで出場を模索した中で決断を下したが、JOCへの正式メンバーの提出期限はきょう5日。遅過ぎる表明に稲葉監督も頭を抱えるしかない。
ドミニカ共和国は巨人勢がカギに
日本陣営に暗い影が落ちる中、ライバル各国がメンバーを発表。米国代表には、DeNAのタイラー・オースティン(29)が選ばれた。リーグトップの打率.338をマークし、17本塁打、44打点。出塁率(.441)や長打率(.643)は両リーグトップ。ソフトバンクのマルティネス、ヤクルトのマクガフも米国代表に名を連ねるなど、米大陸予選から10人が入れ替わった。
メキシコ代表にはロッテの主砲で打率.295、16本塁打、48打点のブランドン・レアード(33)をはじめ、元阪神・ナバーロら、こちらも日本のプロ野球で活躍の助っ人が選ばれた。
28日に日本が初戦を戦うドミニカ共和国代表には、巨人のエンジェル・サンチェス(31)、C.C.メルセデス(27)の両先発投手が内定。ドミニカ共和国は6月下旬に行われたベネズエラ、オランダとの最終予選を勝ち抜き、最後の6カ国目となる出場切符を掴んだ勢いがある。
巨人OBで元投手コーチの高橋善正氏(評論家)がこう指摘する。
「サンチェスは現在5勝(4敗)で今季はすでに4度も離脱している菅野不在の先発ローテーションを守っている。昨季も(1カ月半ほど)離脱した期間があったのに8勝を挙げた実力者です。3日の試合で勝利投手になったメルセデスは、6月上旬に復帰してから防御率は2点台(2.63)と安定。巨人5年目で日本特有の暑さ、球場などの環境に慣れていること。今回はコロナ禍の特殊な大会ですが、移動の負担が少なく、隔離期間が必要ないのも直前の調整をする上で有利。そして何より、日本代表メンバーを知り尽くしているのが不気味です。もちろん、日本代表もメルセデスのことを知っていますが、この1カ月間で4勝(1敗)を挙げているように、日本の各球団は攻略できていません。巨人のローテの中で最も状態がいいとみられるメルセデスは、厄介な敵になりそうです」
北京五輪は8カ国中4位の惨敗
東京五輪の野球は日本、ドミニカ共和国、メキシコ、米国、韓国、イスラエルの6カ国が出場する。ドミニカ共和国は40歳でメジャー通算344本塁打のバティスタ、同通算1962安打の36歳・カブレラ、15年に巨人に在籍した34歳・フランシスコといった“ロートル”を中心に予選を戦ったが、米国同様に本大会はガラリと変わったメンバー構成になりそうだ。前出の高橋氏が続ける。
「WBCとは違って五輪にはメジャーリーガーが出ない上に6カ国しか出場しない。日本だけが『悲願の金メダルだ』と熱くなっているような大会に、一体どれほどの価値があるのか疑問が残る。他競技と比べて大きな価値は見いだせませんが、そんな大会で金、あるいはメダルさえも逃したら、稲葉監督は日本中の非難を浴びかねません。コロナ禍で他国は調整が難しいでしょうし、自国開催で勝って当たり前の五輪。その分、稲葉監督の重圧は相当なものでしょう」
辞退した菅野について巨人の原監督は「悔しいだろうけど、苦渋の決断であり、本人も代表チームの一人としてそういう決断をしたということ。これをバネにしていこうじゃないか」と説明した。結局、菅野、中川の2投手を代表に送り込めず、サンチェス、メルセデスを万全の状態で初戦の相手に送り出す原監督の心中は複雑だろう。侍ジャパンは8カ国中4位でメダルを逃した2008年の北京五輪の再現だけは避けたいところである。