<11>ソルトレークシティー五輪のテロ対策に引っかかった「商売道具」
北京五輪に対する外交的ボイコットが相次いでいる。米国や豪州などが続々と表明する中、日本はどうするのか。その動向が注目されている。
私が出場した五輪5大会の中で、国際問題の影響を受けたのは2002年ソルトレークシティー大会。
開催の半年前、01年9月11日に米国同時多発テロが起き、セキュリティーがものすごく厳重になった。
選手村から会場へ入る際のバスの下、選手自身、カバン……ありとあらゆるものに探知機を当てられた。
特に、スケート靴のエッジが刃物なので、“凶器”と見なされる。空港でも「ピー」、現地でも「ピー」。(富士急行の)長田監督がメンテナンス用に持ってきた部品も「ピー」。一度カバンから出して「OK」となるけど、とにかく時間がかかる。出発は予定より30分早めて行動した。
スケート靴は大切な商売道具。自分のリュックに入れて機内へ持ち込む選手がほとんどだった。テロ後はそれができなくなり、私は刃と靴が平行になるようパッキング。衣類を緩衝材にしてスーツケースの中に入れて運ぶようにした。国際線は特に荷物の扱いが粗いせいもあって、雑に入れると刃が曲がったり靴が変形したりする子もいた。