日本ハムに攻守での「1点の重み」は浸透するか 新庄監督が繰り出す珍練習と独特指導の根底

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 24日、日本ハムの新庄剛志監督(50)からキャンプの臨時コーチとして招かれたのがハンマー投げ五輪金メダリストの室伏広治スポーツ庁長官(47)だ。

 ゴムチューブや紙風船を用いて体幹を鍛える室伏氏の独特な指導に、新庄監督は「バッティング見たら選手が変わっていた気がしましたね。爆発力というか」と、ご満悦。2人で話した内容については「言いたくないね、これは。僕が何回もオファーを出して、来てもらって……」。

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 キャンプの臨時コーチは、陸上十種競技元日本王者でタレントの武井壮氏(48)、5年連続盗塁王の赤星憲広氏(45)に続いて室伏氏が3人目。各界のスペシャリストの指導を受けた選手に求めることを本紙記者が新庄監督に尋ねると、しばしの沈黙の後、「反復練習しかないでしょ。思い出した時でいいので、それをやるっていう。選手個々がそれぞれ気になっていたところに(臨時コーチの教えが)ポンってハマったりする。オレはコレって決めたことをずっとやるタイプだったから(選手にもそれを求める)。最低でも1年は続けないといけないね」。

 こう語った新庄監督の狙いはチーム力の底上げだろう。昨季のチーム得点数はリーグワーストで、失点数は同4位。主力の中田、西川、大田、秋吉もいなくなった。新庄監督はそんなチーム状況を踏まえた上で就任当初から「ノーヒットで点を取る野球」「守り勝つ野球」と事あるごとに口にしているのだ。

 そういった新庄監督の掲げる野球では、攻守ともに1点がより大きな意味を持つことがキャンプ中の練習からもうかがえる。

アクロバティックにホームへ

 さる21日の午後に行われた練習がいい例だ。三塁から本塁への走塁を想定した練習で、ひときわ目を引いたのがホームベースの端っこに置かれたテニスボール。これを目印に選手はまるで仮想の相手捕手から身をかわすかのごとく次々とアクロバチックにホームへ突っ込んでいった。

「新庄監督から『いろいろなスライディングパターンがあって、ブロックのやり方も変わっている。こういうのはどう?』と(話し合った)。テニスボールは紺田(外野守備走塁)コーチのアイデアです」(稲田内野守備走塁コーチ)

 新庄監督発案の練習は、わずかでも得点の可能性を高め、少しでも失点のリスクを減らすことに注力している。思い返せばキャンプ初日にイの一番で着手したのも走塁だった。二塁から三塁を回る際に直角に曲がることを選手に教え、その意図を走行距離の短縮や、「外野の送球が体に当たればラッキー」と語っていた。コロナ感染で出遅れた渡辺諒(26)は「実戦はまだですが、(新庄監督の1点を取りにいく強い意思を)ものすごく感じますね。走塁とかにとても力を入れていますし」と話す。

 逆もまたしかりだ。1点を失わないための練習にしても、フラフープを使った「低くて速い」外野からの返球練習や、臨時コーチとして招いた赤星氏にバッテリーの盗塁対策の指導を頼んだことにしてもしかり。昨季、バッテリーが許した123個の盗塁は12球団でも抜けた数字。相手チームに3ケタの盗塁を許したのは日本ハムだけだ。走塁を磨くそばから相手に走られては意味がない。

■2死からでも「低く強く」

 練習試合の最中、新庄監督が手で大きくジェスチャーをしながら「風!風!」と外野手へ風向きを考慮した守備位置に就かせたのも「守り勝つ野球」を徹底させるためだ。4年目の外野手・万波中正(21)は「その日の風をより意識するようになりました」と話す。

 他の選手たちにも「1点の重み」が徐々にだが浸透しつつある。紅白戦や練習試合ではベンチのナインから、塁上の選手へ「もう半歩!」「もっといける!」と、リードを大きく取るよう呼びかける声が目立つようになった。

 守備の際には塁上に走者がいなくても、たとえ2死からでも、外野手は飛球をさばくなり、「低くて強い」返球を内野手にするようになった。

「得点につなげるためにリードを大きめに取ったりと、点を取ることの意識は強くなっています。返球は新庄監督の意向です。普段からやっておくことで、ランナーがいた場合の訓練になるので」とルーキーの内野手・水野達稀(21)は話す。

 1点を取り、1点を守る野球は、はたして実を結ぶか。

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