出稽古しなかった隆の里の“イイトコ”と真意 コロナ禍でさらに親方の力量も問われる

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 聞いた時はいくら何でも……と思った。稀勢の里(現二所ノ関親方)の師匠である元横綱隆の里の鳴戸親方が生前、現役時代の稽古を語った時だ。

「俺なんか大乃国(現芝田山親方)と隆三杉(現常盤山親方)に2人がかりで押させたもんだ」

 隆の里の稽古を大関時代からかなり見ていたが、そんな場面は覚えがない。大乃国と隆三杉なら合わせて350キロだ。常盤山親方にその話をしたら「ハハハ、そりゃ盛り過ぎだ」と笑っていた。

 相撲界でいう「イイトコ」(話半分や冗談)だが、「出稽古しなくても、部屋で申し合いや三番稽古以外にも工夫次第でやりようがあるんだ」というのが鳴戸親方の主張だった。実際、この2人ではないが、隆の里が俵に足を掛けた状態から若い衆に2人で押させて残す稽古は見た。

 隆の里が育った元横綱初代若乃花の二子山部屋の稽古には「待った」もなかった。手をついて1回で立つ。同じ時間でも1回仕切って汗をふき、2回目で立つ部屋の2倍の番数になる。

 中身の濃さに加え、当時の二子山親方には「関取衆が出稽古に行ったら誰が若い衆に稽古をつけるんだ」との考えがあり、それが鳴戸親方に受け継がれ、弟子の稀勢の里の伸び悩みをめぐる出稽古論争にもつながった。

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