大谷1カ月ぶり投球練習再開は、あくまでテストとガス抜き…2度目の手術の成功率は約61%
投げられないストレス
首脳陣がブルペン投球を再開させるもうひとつの狙いは、投げたがる本人のガス抜きだろう。
昨季は打者一本で本塁打王と打点王のタイトルを獲得。メジャー初の50本塁打-50盗塁を達成して2年連続3度目のMVPを獲得した。打者として飛び抜けた選手であることを証明したものの、本人には二刀流選手としての自負がある。
FA権を取得して移籍も視野に入れていた23年9月、2度目の右肘靱帯修復手術を受ける前、代理人であるネズ・バレロ氏は一部で囁かれた打者専念のウワサを否定するようにこう言っている。
「彼(大谷)は投げることが大好き。二刀流を長く続けることが重要なんだ。ここ数年のように(投打)両方続けていくことは疑いようがない」
打者一本でMVPを獲得、移籍1年目にしてワールドシリーズを制覇しても、大谷は決して満足していない。「最大の目標は勝つこと」だからチームが頂点に立ったことに達成感はあっても、昨季は右肘手術の直後で投げたくても投げられなかった。ゆえに勝利に貢献するために、打つだけでなく走塁にも力を入れた。
しかし、本来は打って投げて、チームが勝つための歯車になりたい。前出の特派員がこう言った。
「大谷は2月中のブルペンで、150キロ超の速球を投げていた。自分の中で、投手としての調整は順調に進んでいるという思いがあったはず。しかも、投げることが大好きです。ドジャースの先発が豊富なチーム事情も、自身が右肘と左肩の手術明けで調整を慎重に進めなければならないことも理解している。だからこそ投手としての調整をいったんストップする首脳陣の方針に『納得した』と言っていますが、ブレーキを踏まれたのは事実です。球団としては、投げたいのに投げられない大谷のストレスを解消するためにも、とりあえず投手としての調整を再開させようという意図もあると思いますね」
いずれにせよ、今季の大谷が打つだけでなく、投げても大車輪の活躍をするとみるのは早計だ。
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日刊ゲンダイは過去に大谷の両親や恩師、同級生を徹底取材。いまではメディア露出を控えるようになった両親だが、当時はふたりの「出会い」まで直々に語ってくれた。それらを網羅した連載コラム、関連記事【秘話 二刀流の血脈】も要チェックだ。