豪傑・深見安博はシーズン中に放り出されてもパの本塁打王を手にした
リーグ全体を巻き込む移籍騒動が起こる中、西鉄はトレードマネー500万円の大下を獲得するべく、選手2人を250万円と換算、残りを現金で250万円払った。
深見と一緒に出されたのは緒方俊明という早大出身の主力投手で、巨人から西鉄の前身である西日本に移った50年に20勝を挙げていた。西鉄入りした大下はこの年、99試合で打率3割7厘、本塁打は深見の半分の13本だった。
実は西鉄は大下争奪戦で出遅れていたが、長距離打者を望むなど東急の大川博オーナーの言い分をそっくりのんで獲得に成功。これは表面的な理由らしく「政治家が絡んだ」という裏面の話もある。この大仕掛けを成功させた三原は54年に初優勝、56年から日本シリーズ3連覇を果たした。
三原を世に出した“陰の殊勲者”ともいえる深見はのちに社会人・日炭高松の監督になり、巨人V9の遊撃手となる黒江透修や中日で20勝投手となった柿本実を育てた。