「おかげさまで生きる」矢作直樹著
東京大学医学部付属病院救急部・集中治療部部長として、多くの人の生死を目撃してきた著者。
前著ベストセラー「人は死なない」で、死は終わりではなく魂は継続すると説き、本書では、救急医療の最前線で命と向き合う中で見いだした「生かされていることに感謝する大切さ」を説いている。
人が心肺停止状態になると、後遺症もなく助かる時間の限界が通常10分間。しかし救急の現場では、それ以前に亡くなる人もいれば10分を過ぎても蘇生する人がいて、人知を超える出来事もたびたび起こる。加えて、著者は小学生時の交通事故と若い頃の登山中の2度の滑落で計3回命を落としかけたことがあり、そのときも自分を生かす「大いなる存在」を体感したという。
この世で生きる者は競技場で動くプレーヤーで、他界した者は観客席で声援を送る応援団という、生者と死者の関係性を表す著者ならではの表現も興味深い。いたずらに死を恐れるのではなく、生あるうちは人生で得るさまざまな経験から学び、「おかげさま」という感謝の姿勢で生を全うすることこそが大切なのではないかと説いている。