薄れかけていた反核への思いを編む

公開日: 更新日:

 合間に紹介される、原爆の爆発時の高熱で原形をとどめぬほどに変形した象牙の印鑑をはじめ、放射能汚染の状態が目で見て分かる「オートラジオグラフ(放射線像)」という手法で映し出された飯舘村で採取したカエデや軍手(表紙)、現代アートのように放射能汚染物質を詰め込んだフレコンバッグが沿道に並ぶ川内村の風景など、生々しい写真に改めて胸が突かれる。そうした中に挟み込まれた、特産品の「凍み大根」を作る飯舘村のおばあちゃんたちの震災前の笑顔が印象的だ。それはこの何げない日常がかけがえのない風景であることを改めて教えてくれる。

 どこにでもあるような両脇に草が生い茂る一本道の写真が、エノラ・ゲイとボックス・カーが広島と長崎に向けて飛び立ったテニアン島の飛行場と分かると、途端に、その場所がとても意味のある、恐ろしい場所に思えてくる。

 各メッセージ、そして一枚一枚の写真が、私たちの薄れかけていた反核への思いに、再び小さな火をともす。

(講談社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ吉井監督が佐々木朗希、ローテ再編構想を語る「今となっては彼に思うところはないけども…」

  2. 2

    20代女子の「ホテル暮らし」1年間の支出報告…賃貸の家賃と比較してどうなった?

  3. 3

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 4

    「フジ日枝案件」と物議、小池都知事肝いりの巨大噴水が“汚水”散布危機…大腸菌数が基準の最大27倍!

  5. 5

    “ホテル暮らし歴半年”20代女子はどう断捨離した? 家財道具はスーツケース2個分

  1. 6

    「ホテルで1人暮らし」意外なルールとトラブル 部屋に彼氏が遊びに来てもOKなの?

  2. 7

    TKO木下隆行が性加害を正式謝罪も…“ペットボトルキャラで復活”を後押ししてきたテレビ局の異常

  3. 8

    「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上

  4. 9

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  5. 10

    松たか子と"18歳差共演"SixTONES松村北斗の評価爆騰がり 映画『ファーストキス 1ST KISS』興収14億円予想のヒット