「夕影」辻堂魁著
身につけた算盤の腕で生計を立てる、“算盤侍”こと唐木市兵衛は、腹違いの兄で公儀十人目付筆頭格の信正の仲介で旗本・三宅家から依頼され、下総の葛飾に向かう。3年前、不祥事を起こし虚無僧となった三宅家の末息子・辰助が病死したとの噂があり、安否を調べて欲しいというのだ。市兵衛は、出立前に訪ねてきた信正の部下・弥陀ノ介から、葛西の西利根村の貸元・吉三郎にかくまわれているはずの女への伝言を頼まれていた。しかし、渡し船の船頭によると、3カ月前に吉三郎は何者かに殺され、吉三郎の跡目を継いだ3姉妹と、松戸の貸元・文蔵の間で縄張り争いが起きているという。
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