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北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「ゼロ以下の死」C・J・ボックス著 野口百合子訳

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 シリーズものの新刊は、全作を読んでないと手に取りにくい。いや、全作でなくても、少なくても数作は読んでないと、途中からは読みにくい。話の展開がわからないんじゃないか、と思っても仕方がない。しかし待ってくれ。本書は猟区管理官ジョー・ピケットを主人公とするシリーズの第8作なのだが、これまでの作品をまったく読んでなくても大丈夫なのだ。安心して手に取られたい。

 本書はシリーズ第2作「凍える森」の後日譚なのだが、そんなことは知らなくても全然かまわない。これが面白ければ「凍える森」にさかのぼればいい。そしてこの2冊が面白ければ、残りの6作をゆっくり読めばいい。なぜそれを勧めるかというと、このシリーズ、これからがぜん面白くなるのだ。いまから読み始めることをぜひお勧めしたい。

 次女として里子に迎えた少女エイプリルは6年前に死んだはずなのだが、その彼女から連絡が来る、という衝撃的な冒頭から本書は幕を開ける。しかも彼女は、連続殺人鬼に捕まっているらしいとわかってくる。かくてジョーの懸命の捜索が始まることになるが――という話で、感動的なラストまで一気読みの傑作だ。いやあ、面白いぞ。

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