「世界をこの目で」黒木亮著
著者はロンドン在住28年の経済小説家。大手都市銀行に入行してエジプトのカイロへ留学、その後ロンドン支店に勤務。以降も証券会社、総合商社などの仕事に携わり世界各国を飛び回り、専業作家に転身した後も取材で各地を旅している。
これまでに訪れた国は、ヨーロッパはほぼ全域、中東・北アフリカはリビアとレバノン以外すべて、その他サハラ以南のアフリカ、中央アジア、中国、インド、ベトナム、北・中米など全部で78カ国。
本書は、著者がこれまで見てきた世界各地の様子、現在暮らしているロンドンのこと、自身の作品の舞台裏などについて書いたエッセーをまとめたもの。
サハリン、クルド、キルギスなど、日本人がめったに訪れない土地の珍しい話題、旅のエキスパートたる著者による「一人旅の流儀」(宿の選び方、トラブル回避の方法、土産の選び方等々)など、世界中を旅する著者ならではの知見にあふれている。また元金融マンで経済小説家としての立場からの世界情勢の分析、作家心得といった実践的知識も開陳されており、著者の幅の広さがうかがえる。(毎日新聞出版 1550円+税)