「コンビニ人間」村田沙耶香著

公開日: 更新日:

 古倉恵子、36歳独身。普通の家に生まれ、普通に愛されて育ったが、幼い頃から喜怒哀楽の感情が欠落し、周囲から奇妙がられていた。大人になってもそれは変わらず、両親は心配し、自分でも「治らなくては」と思っていた。

 そんな彼女のアジール(避難所)となったのがコンビニだった。完全にマニュアル化された挨拶と表情、それを真似てさえいれば「普通」でいられる。行き場を見つけた彼女は、大学卒業後もコンビニでアルバイトを続け周囲からの信頼を得るようになっていた。

 そこへ白羽という男がアルバイトで入ってくる。白羽はコンビニの仕事をバカにして不満を漏らしてばかりのイタイ男で、就職も結婚もせず18年もアルバイトをしている古倉を「普通」じゃないと責め立てる。せっかく築き上げた「普通」の仮面を剥がされそうになった古倉は、新たな「普通」を身にまとうべくある決断をするが……。

 芥川賞受賞の日もコンビニで働いていたという作者が、「普通」という強迫観念に覆われている現代日本の暗部に鋭いメスを入れた話題作。(文藝春秋 1300円+税)


【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末