「住友銀行秘史」國重惇史著

公開日: 更新日:

 戦後最大の経済事件といわれるイトマン事件から四半世紀が過ぎた。バブル経済の真っただ中、中堅商社イトマンが闇の勢力に食いものにされ、メーンバンクの住友銀行は巨額な損失をこうむった。当時のイトマンの社長は住友銀行から派遣された河村良彦。「住友の天皇」と恐れられた磯田一郎会長の腹心だった。

 イトマンのおかしな動きにいちはやく危機感を抱き、動き出した男がいた。当時、住友銀行業務渉外部部付部長で、後に取締役となった著者、國重惇史。彼は上着の胸ポケットに小さな手帳をしのばせ、社内外の動きを克明に記録しはじめた。「ローマ法王に仕えるにあらず、神に仕える」の心境だったという。

 そして、大蔵省とマスコミに対して内部告発に踏み切る。日本経済新聞の敏腕記者、大塚将司をはじめ、メディアの力を使って問題の顕在化を図った。

 社内が慌ただしい動きを見せる1990年3月から、イトマンの河村社長が逮捕される翌年7月まで、手帳は8冊に及んだ。この手帳をベースに書き上げたのが本書。大半の人物が実名で登場、渦中の臨場感、緊迫感が伝わってくる。

 大組織の中にこんな人物がいたのか! 闘うバンカーの姿は、企業人の魂をゆさぶる。(講談社 1800円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情