「素敵な日本人――東野圭吾短編集」東野圭吾著
近所の神社に初詣に出かけた夫妻が下着姿の町長を発見。すぐに警察に通報するが、なんともいい加減な対応の揚げ句、強引に犯人を仕立て上げようと夫妻に偽証を強要する。業を煮やした夫妻が、警察の見落としていたある事実を指摘する……というユーモアミステリー風味の「正月の決意」から始まる、全9編が収められた短編集。
2作目の「十年目のバレンタインデー」は、10年前に突然姿を消した元カノから連絡を受け、いそいそと出かけていくミステリー作家を待ち受けていた衝撃の事実が明かされるという、変則的なリーガルサスペンス仕立て。続く「今夜は一人で雛祭り」は、地方の格式のある名家へ嫁いでいく一人娘の行く末を心配する父親の心情を描きながら、亡き妻が残した雛祭りの謎を解いていくという日常ミステリー。その他、近未来ミステリー(「レンタルベビー」)、本格ミステリー(「クリスマスミステリ」)といったさまざまな趣向が、季節の風物を織り込みながら描かれていく。
円熟した味わいを堪能できる最新短編集。(光文社 1300円+税)