公開日: 更新日:

「仮想通貨バブル」日本経済新聞社編

 一獲千金の夢をかき立てる仮想通貨。しかしそこには未知のリスクが待ち構えている。

 昨年4月の改正資金決済法によって一気に本格化した仮想通貨時代。昨年12月には年初の20倍、3年前の100倍を記録。「仮想通貨少女」なる便乗アイドルまで登場した。

 しかし直後にコインチェックの不正流出問題が露見。ずさん極まりない情報管理体制で仮想通貨の信用は一気に下落した。海外でも英金融行為監督機構の長官がビットコイン投資家は「すべてを失う危険を覚悟すべき」と警告。現に昨年からの1カ月で相場は半減している。また仮想通貨取引では所得税・住民税合計で15~55%も税金がかかり、ネットの物品やサービス購入にもすべて取引時価に応じた課税がなされる。これを知らないと青ざめるのだ。

 日経新聞連載をまとめた本書はさまざまな具体例を紹介しながら、仮想通貨の明と暗を伝える。コンピューターをフル稼働してブロックチェーン(分散型台帳)の計算をするマイニング(採掘)もビジネスになるが、膨大な設備投資が必要になってきたため現在では少数派。その大半がいまや中国の業者。それが法整備の整った日本を「楽園」とみなしているという。 (日本経済新聞出版社 850円+税)

「仮想通貨で銀行が消える日」真壁昭夫著

 みずほ銀行のアナリストを経て大学の特任教授になった実務家が教える仮想通貨。ベテランだけに仮想通貨は「長期の資産形成には向かないように思う」と明言。ビットコインは「山っ気」があるのだ。だからリーマン・ショック後の世界経済の衰えを支えた中国で、仮想通貨バブル状態が起こりやすくなるわけである。

 銀行はビットコイン取引所に出資しているが、経営は別。技術面からIT企業の進出が目立つ。章タイトルは「銀行が要らなくなる日」と刺激的だが、内実は銀行以外の企業の仮想通貨市場への参入を指す。ベテラン実務家らしい冷静な筆致が持ち味。 (祥伝社 820円+税)

「ビットコインとブロックチェーンの歴史・しくみ・未来」ニュー・サイエンティスト編集部著、水谷淳訳

 定評ある英科学雑誌がまとめたノンフィクション。書名だけ見ると「今さら聞けない」系みたいだが、実は抜群に面白い読み物。単なるしくみの解説ではなく、誰がいつどのように開発や普及に関わり、メディアがどう報じ、どんなトラブルが起こったかを人間ドラマとして描く。

 ビットコインの技術的限界を超えようとして雨後のタケノコのように出てきたアルトコイン、仮想通貨売買を超えて広く応用されつつあるブロックチェーンの現状など、いたずらに警戒心をあおるだけではない未来像が得られる。 (SBクリエイティブ 1600円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ