ギター小僧世代の逆襲
「エレクトリック・ギター革命史」ブラッド・トリンスキー、アラン・ディ・ペルナ著 石川千晶訳
老舗ギターメーカー米ギブソン倒産のニュースにショックを受けた「いかすバンド天国」世代の中高年は多いはず。原因はなんと「若者のギター離れ」!?
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エレキギターの発明が音楽に革命をもたらしたことは間違いない。だが、どのように? その答えがわかるのが本書。正真正銘ギターマニアによるギターマニアのためのギターの歴史だ。
ギブソンの名器で知られるレスポールは実はフェンダーの創業者と親友だったなどの雑学も面白いが、ジミヘンの音楽にとってストラトキャスターは「宇宙船」だったとか、ブーイングを浴びたボブ・ディランのエレキ移行の真相、ジョージ・ハリスンの12弦ギターは風邪で寝ている間にポールとジョンが手配してやった話など、「ギター・ワールド」誌の編集長だった著者だけにファンには興味が尽きない話題が次々に出てくる。ロックに主眼があるためベンチャーズなど「サーフィンサウンド」の一言で片付けられているし、寺内タケシも高中正義も出てこないが、そこは誰かが「ニッポンエレキ革命史」を書くべきだろう。翻訳もさすがの一言。
(リットーミュージック2500円+税)
「ヴィンテージ・ギター入門」月刊Player別冊
書店の店頭からあっという間に姿を消した人気のムック。ギブソンはレスポールからフライングV、ファイヤーバードまで、フェンダーはテレキャスター、ストラトキャスター、ムスタング、ほかにリッケンバッカー、グレッチなどファン垂涎の名器が大判の誌面にきれいなカラー写真で続々登場する。
「イカ天」のファンだったという程度ではとても手の出ないビンテージ品ばかりだが、ピックアップやセレクターのノブの拡大写真まで入って、まさにマニアックなこだわりがあふれかえって、見ているだけでも楽しい。思わず楽器店に足を向けさせる良書。
(プレイヤー・コーポレーション 3200円+税)
「ジョニー・マー自伝」ジョニー・マー著 丸山京子訳
「ローリングストーン」誌が選ぶ史上最も偉大なギタリスト100人に選ばれた元「ザ・スミス」のギタリストといえばジョニー・マー。その自伝である。
1963年生まれだから今年55歳。まさにイギリスの「イカ天」世代だ。マンチェスターのアイルランド系の労働者家庭に生まれ、カトリックの学校に通い、幼いころからギターとファッションに魅せられる。15歳で学校に行かなくなり、19歳でザ・スミスを結成。大人気を得るが23歳でバンドは解散。すぐにトーキング・ヘッズやポール・マッカートニーから声がかかったという。
そんな生涯を淡々と振り返るてらいのなさがいい。愛用のギターはフェンダーのストラトキャスターとジャガー、ギブソン335の12弦。ギターとロックを愛する人なら誰もが楽しく読める。
(シンコーミュージック・エンタテイメント 2800円+税)