「人間狩り」犬塚理人著
物語の発端は、20年前に起こった小学生女児殺人事件。
被害女児の自宅に、少女の両目が送り届けられるという残忍な事件で、加害者となった14歳の少年の家からは、犯行の様子を記録した映像が押収されていた。しかし、20年もの月日を経て、その映像が闇オークションに出品されるという事件が起こる。人事第一課監察係の白石は、捜査関係者による映像の持ち出しを疑い、当時捜査にかかわった捜査関係者の周囲を探っていく。一方、ネット上でも事件は話題となり、犯人捜しをする自警団が動き始めたのだが……。
第38回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。少年法によって守られ社会復帰を果たしていたかつての凶悪犯を巡るさまざまな人々の複雑な思いが、克明に描かれている。
正義の名のもとにネットに集まる自警団は、社会にどんなインパクトを与えていくのか。匿名の人々がネットを介して暴走する危険性をあぶりだした、極めて現代的なテーマ設定が興味深い。
(KADOKAWA 1500円+税)