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「じゃ、また世界のどこかで。」近藤大真著

 いつかは行ってみたい世界一周旅行。しかし、働き盛り世代にとってそれは遠い夢だ。そこで今回は、ページをめくるだけで世界のさまざまな国へといざなう、旅の本をご紹介。国境線を巡る旅から歌で巡る世界旅行まで、ユニークな切り口の4冊をピックアップした。

 1年半をかけて33カ国を巡った著者による旅の写真集。特筆すべきなのが、風景の写真だけではなく現地の人々の笑顔が数多く掲載されている点。そして、旅先で出会った2000人もの人々に、インスタントカメラの写真「チェキ」をプレゼントしていることだ。

 写真家の自分にできるのは、「今ある幸せ」を写真にして贈ること。そんな思いから始めた活動だという。エチオピアでは、少数民族であるスリ族やカロ族の暮らす村を訪ねた。彼らの生活にはカメラもスマホもない。思い出を残すことのできない彼らの村で、笑顔を撮ってチェキを贈る。それは単なる写真にとどまらず、家族や友達と笑いあった証しを贈ることになるのではないかと著者。

 美しい風景の中、とびきりの笑顔でチェキを持つ人々の写真が印象的。その土地の魅力も存分に伝わってくる。

 (KADOKAWA 1400円+税)



「たびうた♪ 歌で巡る世界の絶景」アトリエタビト、梅原トシカヅ編

 旅情をいざなう歌の歌詞と解説とともに、舞台となった土地の写真と行き方をセットにした本書。ありそうでなかった旅のガイドブックだ。

 1979年にリリースされた久保田早紀の「異邦人」は、三洋電機のテレビCMに採用されていた。当時の日本人には未知だったシルクロードの風景に乗って流れた曲に多くの人がクギ付けとなり、ミリオンヒットとなった。実は東京の国立市の並木道をイメージして書かれた歌詞だというこぼれ話もあるが、イントロが流れた瞬間にこれほど異国情緒を感じさせる曲も珍しい。シルクロードの中継地点となったウズベキスタンの古都サマルカンドは青の都とも呼ばれ、トルコブルーのタイルで模様が描かれた建築物が美しい。成田空港から首都タシケントまでは季節運航便もある。

 歌とともに世界を旅してみたい。

 (ダイヤモンド社 1200円+税)

「世界の国境を歩いてみたら…」「世界の国境を歩いてみたら…」番組取材班著

 日本の隅々まで観光しても、絶対に見ることのできないものがある。それは、地続きの国境線だ。本書はBS11の大人気番組の書籍化。世界各地の国境線付近の、歴史や文化を紹介している。

 オランダとベルギーの国境線は、東西で約450キロ。確定したのは1843年のマーストリヒト条約締結時だが、オランダの町バールレ・ナッサウには、世界でも珍しい複雑な国境線がある。その複雑さは、1軒の家の中に両国の領土が入り乱れることもあるほど。国の領土が地理的に分離し、一部が他の国に属するいわゆる“飛び地”が、町内に22カ所もあるのだ。

 かつてこの町を治めていた権力者は、家来たちに頻繁に土地を分け与えていた。その後、オランダとベルギー間で国境を引こうとしたが、土地の権利者があまりにも複雑だったことから、飛び地として残ったのだそう。住民はさぞかし不便だろうと思いきや、食料品は食品物価指数の低いオランダで買い、ガソリンは環境問題に厳しくないベルギーで買うなど、いいとこどりができると評判だとか。

 ドライブスルーやアプリで入国できるアメリカとカナダの国境や、麻薬の移送ルートとして緊張状態が続くパナマとコスタリカの国境など、日本人には想像のできない“国境ドラマ”が満載だ。

(河出書房新社 1400円+税)

「世界一周猫の旅」中西なちお著

 著者は“旅するレストラン”を主宰する料理人。店舗を持たず、さまざまな場所で料理を提供してきた。また、優しい水彩画と異国情緒漂う紙片をコラージュした作品を手がけ、独特の世界観を持つ作画家としても活躍している。前著の「猫ごよみ365日」では著者が頭の中で飼っているという“空想キャット”のトラネコボンボンのまなざしで、365日の行事を表現。そして本作では、365日をかけて空想キャットが世界のあちこちを冒険する様子が描かれている。

 例えば1月1日は、ロシアの首都モスクワにある聖ワシリイ大聖堂の前を颯爽と歩き、1月26日はアイスランドのストロックル間欠泉でお湯の噴き出す様子にビックリ仰天、といった具合だ。

 すべての作画に旅のテーマの補足情報が添えられ、一風変わった旅行ガイドとしても活用できそうだ。

 (誠文堂新光社 2400円+税)

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