「酒呑みに与ふる書」キノブックス編集部編
ボードレールは、時の恐るべき重圧を感じないために、つねに酔うことが必要だ、葡萄酒に、詩に、または美徳に、なんでもあなたの好きなものに(井上究一郎訳)と詠んだ。
中島らもは10代の頃から、自分自身も自分がその一隅を占めている世界も、醜悪で愚かで腐臭を放っていると考えて、憎み、呪っていた。酒の酔いはらもにとって、「自分の精神の欠落した部分にあつらえたようにぴったりとはまり込んで、空無のところを埋めてくれる」ことに気づいた。泥酔してぶっ倒れる瞬間は、夜ごとに訪れる小さな「ビッグ・バン」だったのだ。
他に、角田光代、筒井康隆ら、45人が陶酔と覚醒について語った詩やエッセーなどを収載。
(キノブックス 1500円+税)