「口がきれいだと、健康で長生きできる」古舘健著
口腔外科医として年間およそ2000人の患者の口の中を診察してきた著者は、万病を遠ざける近道は口内環境を整えることだと断言する。口は体の中でも外部に開かれた部位であり、口の健康が保たれていなければさまざまな疾患を招きやすくなるためだ。
よりよい口内環境のためにまず重要なのが、唾液減少の予防だという。年齢を重ねても自分の歯でしっかりと噛めることは、健康長寿のために非常に重要だ。しかし、唾液が少なくなると虫歯や歯周病にかかりやすくなり、歯を失わせるきっかけとなる。
唾液には、口内細菌が糖類から作り出す酸を中和させる働きがある。たとえ甘いものを食べても、唾液がしっかりと出ていれば30~60分後には酸が無効化される。ところが唾液が減少していると、この働きが弱まり、いくら歯磨きを頑張ってもわずかに残った糖から酸が作られ、歯へのダメージとなる。
さらに唾液には、母乳にも含まれるタンパク質の免疫グロブリンAや、リゾチームといった酵素も豊富。これらが高い抗菌作用を発揮し、ウイルスや細菌が体内に侵入するのを防いでくれている。つまり、唾液が減少するとこれらの“門番”も少なくなるということで、疾患リスクも高まってしまうのだ。
年齢を重ねるとドライマウス(口腔乾燥症)になる人が増えるが、簡単な口のエクササイズで唾液を増やすことは可能だ。例えば、口を大きく動かしながら「あ~、い~、う~、べ~」と発声すること。また、両耳の前や頬の下を指先でくるくるとマッサージするのも、唾液の分泌を助けてくれる。
本書では、二刀流での歯磨き方法や口を鍛える呼吸法なども伝授。健康長寿を目指すなら、まずは口の環境を整えることだ。
(KADOKAWA 1200円+税)