「百舌落とし」逢坂剛著

公開日: 更新日:

 引退した大物政治家・茂田井が、首筋に千枚通しを突き立てられて絶命している姿で発見された。しかも被害者の茂田井が撮影した写真には、何者かによって飛べないようにテグスで足を縛られた上、まぶたを縫い合わされた野鳥の百舌の姿が写っており、被害者の上下のまぶたも同じように縫い合わされていたのだ。その残忍な手口から、かつて武器輸出と政権の癒着を巡って関係者が次々と不審な死を遂げた伝説の殺し屋「百舌」による犯行が疑われた。一連の事件は、まだ続いていたのか。危機感にかられるこれまで捜査に関わってきた警視庁の倉木美希と私立探偵の大杉良太は、身の危険を感じながらその核心に迫っていくのだが……。

 本作は、「百舌の叫ぶ夜」から「墓標なき街」まで30年以上続いてきた同シリーズの待望の完結編。表題「百舌落とし」とは、飛べない百舌をおとりにして、寄ってきた他の鳥をつかまえる手法のこと。茂田井の殺害は次の殺害のおとりではないかという疑心暗鬼のなかで行われる、正体不明の殺し屋・百舌と捜査班の攻防がスリリング。黒幕との対決シーンまで一気に読ませる。

(集英社 2000円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ