「深層地下4階」デヴィッド・コープ著 伊賀由宇介訳
いやあ、面白い。読み始めたらやめられない面白さだ。
1970年代に打ち上げられたロケットの破片が地球に落下してきたとき、打ち上げ時には存在しなかったものを宇宙から持ち帰ってくる。それは、火山の中でも深海でも外宇宙でも、どこでも生き延びられるしぶとい菌だ。生物に寄生して脳を支配し、自らの複製を作り上げるという唯一の目的に向かって増殖する菌だ。カマキリに寄生するハリガネムシみたいなものだと思えばいい。
そのサンプルを地中深く埋めるのが本書のプロローグで、その12年後にパンドラの箱が開くところから真の物語が始まっていく。
その真菌が、自らが生き延びやすい状況を選んで、徐々に、少しずつ、しかし途中からは素早く、侵食していくディテールが圧巻だ。不気味で、スリリングな、その様子が迫力満点に描かれるので目が離せない。
問題はラストがややあっけないこと。残り30ページのところで、これ、どうやってもあと30ページでは終わらないだろ、と思ったが、終わっちゃうのである。急いで書いておくが、それでも十分に面白い。しかし、ここはもっとじっくり「敵」との戦いを描いて欲しかったと思う。ディテールがいいだけに残念である。
そういうキズがあることは指摘しておかなければならないが、バイオホラー小説として一定の水準は保っている。今月の拾いものだ。
(ハーパーコリンズ・ジャパン 1091円+税)