「レストラン『ドイツ亭』」アネッテ・ヘス著 森内薫訳

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 主人公は、レストラン「ドイツ亭」を営む両親と姉と弟と一緒にフランクフルトに暮らす24歳の女性・エーファ。普段は、損害賠償の話し合いなどの際に駆り出されるドイツ語とポーランド語の通訳として働いている。

 ある日、エーファは恋人のユルゲンに結婚の申し出をしてもらうため初めて家に招いた。しかしそんな最中に上司から電話が入り、ピンチヒッターとして仕事に駆り出される。何もわからないまま出かけたエーファだったが、それはアウシュビッツ裁判に必要な通訳の仕事だった。家族やユルゲンに反対されつつも、エーファは義務感に駆られて通訳を続けることに。しかし、それは何も知らなかった自分を揺るがす事実を暴くことになっていく……。

 本書は、脚本家としてキャリアがある著者が初めて手掛けた小説だが大きな反響を呼び、発表後23カ国で翻訳された。フィクションとはいえ、ナチス犯罪追及センターを設立した実在の検事長をモデルにした人物も登場する。 

 負の歴史に加担した人々が、どのようにしてその事実に向き合うことができるのか、考えさせられるアウシュビッツ裁判をテーマにした小説。

(河出書房新社 2900円+税)

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