「ごめんなさい、ずっと嘘をついてきました。」加藤就一著

公開日: 更新日:

 東日本大震災から10年の今年、多くの人が新型コロナに気を取られているさなかに、日本政府は東京電力福島第1原発から排出されている汚染水を福島沖の太平洋へ放出すると発表した。コントロール下にあると日本の総理大臣が言い切ってしまった原発の真実の姿はどこにあるのか。本書は、「私=原子力発電所」がついてきた数々の嘘を告白し、懺悔(ざんげ)の形で書かれた告発の書だ。著者は原発ドキュメンタリー番組制作者で、14項目にわたる嘘の詳細をデータや取材をもとに赤裸々に語っている。

 たとえば、原発は運転していなくても海にも空にも放射性物質を放出していることや、核廃棄物入りのドラム缶を千葉沖に海洋投棄していたこと、六ケ所村の再処理工場では原発以上の核の廃液を沖合に流してしまったことなど、唖然とする事実を紹介。

 なお、多核種除去装置ALPSでも取り除くことができないトリチウムを含んだ福島の汚染水は、いくら薄めても廃棄する放射性物質の総量は同じであることに言及し、100年間大型タンクに保管した後に廃棄することで悪影響が減らせると提案している。

 原発を巡る嘘と隠蔽のあまりの多さに身の毛がよだつ。

(書肆侃侃房 1760円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」