「見習医 ワトソンの追究」鏑木蓮著

公開日: 更新日:

 美容研究家の五十嵐夏帆32歳が、母親との電話中に何者かによって腹部を刺され、三品病院に救急搬送された。創傷は脾臓にまで達していたが懸命な治療により、脾臓を温存したまま一命をとりとめる。ところが術後、脳幹の損傷がみられ、夏帆は死亡する。

 夏帆のオペに立ち会った内科医・入家陽太郎は、院長の命を受け、死因の特定及び、医療ミスがなかったかを調べることに。一方、事件を担当する大阪府警の刑事・成山有佳子が夏帆の仕事場に入ると、真菰(まこも)が入っていた水槽が割れ、床が水浸しになっていた。やがて陽太郎は有佳子の助けを得て、自宅と仕事場で病原菌の検査を開始する。

 江戸川乱歩賞作家である著者の最新作は、医療と警察を融合させた医療ミステリー。

 付きまといをしていた夏帆の元夫、代理店に勤める恋人、事務所の弁護士、脅迫状の送り主ら次々に容疑者が浮かんでは消えていく。警察小説の様相は次第に医療の領域へと舞台を移してゆくが、なかでも病原菌特定に至る推察は大きな読みどころだ。

 自然に生息する菌が突然、牙をむく恐ろしさが、このご時世、リアルに迫ってくる。 (講談社 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動