「海がきこえる」氷室冴子著
進学のため高知から上京した拓は、石神井公園近くのアパートで一人暮らしを始める。数日後、一足先に上京した高校時代の友人・山尾から電話がかかってきた。医師の親が所有する神泉のマンションで暮らす山尾は、すでにホームシックになっているらしい。よもやま話の中、拓は地元の大学に進学したはずの武藤里伽子が東京にいると聞かされ心が騒ぐ。
拓らが通っていた中高一貫校は県内有数の進学校で、里伽子は5年生(高校2年)の時に東京から編入してきた。この広い東京で再会することはないだろうが、ふと6年生のときに一緒のクラスになった里伽子のせいで親友の松野と気まずくなったことや、2人で泊まったホテルのことが思い出されてくる。
2008年に逝去した著者の代表作の復刻。
(徳間書店 880円)