「EV(イブ)」高嶋哲夫著
地球温暖化に対処するため、世界各国が2030年までに新車販売を電気自動車に限定するとの方針を打ち出す中、経産省製造産業局自動車課の瀬戸崎は焦りを募らせていた。中国や欧米は、ガソリン車、ハイブリッド車で抜きんでた技術を持つ日本を追いかけることを諦め、新しいルールで自動車業界をリニューアルしようとしているとしか思えないからだ。
日本も早急にEVにシフトしなければ出遅れてしまうのは明らかだが、500万人の雇用を支える自動車は日本の最重要産業であり、業界も政治家の動きも鈍い。瀬戸崎は、EVの先頭を走る米国テスラのCEOや日本の大手自動車会社の社長が中国と接触していると知り、不安がよぎる。
日本の自動車産業の未来に警鐘を鳴らす問題作。
(角川春樹事務所 990円)