「オリンピックを殺す日」堂場瞬一著

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 東日スポーツに入社して以来、オリンピック取材を担当してきた菅谷建人は、コロナ禍で行われた東京オリンピックを最後に担当から外された。オリンピックのスペシャリストを自任していただけに、受け入れがたかった菅谷だったが、別の世界規模の新しい大会が開かれるという噂を耳に挟み、起死回生をかけて単独で取材に挑んだ。

 ところが、関係者や出場しそうな人物に聞いてみるものの、なぜか皆一様に口が堅く、なかなか情報が掴めない。次第に情報はネットから一方的に流されるのみで、マスコミの会見は行わない方針だということがわかってくる。果たして、「ザ・ゲーム」と呼ばれるその大会の思惑とは何か。そして、その企画を仕掛けた謎の人物の正体とは。

 本書は、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職が発覚している今だからこそ読みたい、オリンピックの意義を問い直す衝撃の問題作。

 主人公の目を通して、米国のテレビ放映時期やスポンサーと広告代理店の事情で振り回されるアスリートたちの本音に迫りつつ、これからのスポーツ報道の在り方を考えさせる小説となっている。

(文藝春秋 1980円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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