「オリンピックを殺す日」堂場瞬一著

公開日: 更新日:

 東日スポーツに入社して以来、オリンピック取材を担当してきた菅谷建人は、コロナ禍で行われた東京オリンピックを最後に担当から外された。オリンピックのスペシャリストを自任していただけに、受け入れがたかった菅谷だったが、別の世界規模の新しい大会が開かれるという噂を耳に挟み、起死回生をかけて単独で取材に挑んだ。

 ところが、関係者や出場しそうな人物に聞いてみるものの、なぜか皆一様に口が堅く、なかなか情報が掴めない。次第に情報はネットから一方的に流されるのみで、マスコミの会見は行わない方針だということがわかってくる。果たして、「ザ・ゲーム」と呼ばれるその大会の思惑とは何か。そして、その企画を仕掛けた謎の人物の正体とは。

 本書は、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職が発覚している今だからこそ読みたい、オリンピックの意義を問い直す衝撃の問題作。

 主人公の目を通して、米国のテレビ放映時期やスポンサーと広告代理店の事情で振り回されるアスリートたちの本音に迫りつつ、これからのスポーツ報道の在り方を考えさせる小説となっている。

(文藝春秋 1980円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  4. 4

    永野芽郁は大河とラジオは先手を打つように辞退したが…今のところ「謹慎」の発表がない理由

  5. 5

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  1. 6

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  2. 7

    威圧的指導に選手反発、脱走者まで…新体操強化本部長パワハラ指導の根源はロシア依存

  3. 8

    ガーシー氏“暴露”…元アイドルらが王族らに買われる闇オーディション「サウジ案件」を業界人語る

  4. 9

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  5. 10

    内野聖陽が見せる父親の背中…15年ぶり主演ドラマ「PJ」は《パワハラ》《愛情》《ホームドラマ》の「ちゃんぽん」だ