石原壮一郎(コラムニスト)
4月×日 このあいだ還暦を迎えました。これからの人生のテーマは「いかにゆるく生きるか」でしょうか。他人と競ったり背伸びしたりしながら、幸せな日々が過ごせるとは思えません。
力を抜く極意を学ぼうと手に取ったのが、白石昌則著「帰ってきた生協の白石さん」(講談社 1320円)です。18年前に出版された前作「生協の白石さん」は、学生からの「ひとことカード」に対する白石さんのゆるい回答が衝撃的で、累計100万部を超える大ベストセラーになりました。
今回も白石さんは、令和の現役大学生や、アラフォー世代になった平成の大学生からの質問や相談に、真摯にふんわりと答えてくれています。
アラフォー世代からの「理想と現実の違いを様々感じながら、これまで生きてきました。つまりこれは、うまくいってない人生なのでしょうか」という質問。白石さんはまず、20年ほど前に友人の結婚式で、ホテルのエントランスの広い階段に仲間と並んで、「西部警察」風の写真を撮ろうとした話から始めます。
ところが「仕上がりは『ドリフ大爆笑』のオマージュの域を出ませんでした」とのこと。でも白石さんは「理想とは違う現実もまた、人生を味わい深くさせてくれるのではないでしょうか」と言ってくれています。
そう、誰しも自分に似合う路線があるし、自分にとって居心地がいい現実も必ずあるはずです。
4月×日 ドリフつながりですが、高木ブーさんの自叙伝「アロハ90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう」(小学館 2420円)と、「高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に」(ワニブックス 2970円)も、ありのままの自分で生きる大切さを教えてくれます。
じつは2冊とも、構成やインタビューでお手伝いさせてもらいました。いつも流れに身を任せつつ、自分の役割を果たしてきたブーさん。貴重なお話をたっぷり伺えたのは、生涯の財産です。
何となく疲れている人には、ブーさんの言葉が深く染み入るでしょう。肩ひじ張ってきた人は、生き方を見つめ直すきっかけになるはずです。