「灯台からの響き」宮本輝著
「灯台からの響き」宮本輝著
62歳の康平は、板橋区の仲宿商店街で父から継いだ中華そば屋を営んできた。しかし、店を共に切り盛りしてきた妻の蘭子が2年前に急逝。以来、店を閉じ、ひきこもり生活を送っている。
ある日、読書が趣味の康平は蔵書に挟まっていたハガキに気づく。それは30年前に蘭子宛てに届いたハガキで、当の蘭子は差出人の男性に覚えがないと言っていたが、住所も宛名にも間違いはなかった。ハガキには大学最後の夏休みに灯台巡りをしたと記されていた。体力の衰えを感じていた康平は、ふと思い立ち、自分も灯台巡りをしてみようと、まずは房総半島に出かけてみる。
旅先で思い出す蘭子との日々、そして幼馴染みの死や離れて暮らす子どもたちとの会話を通じ、止まっていた康平の人生が再び動き出す感動作。
(集英社 990円)