「檜垣澤家の炎上」永嶋恵美著
「檜垣澤家の炎上」永嶋恵美著
かな子が小学校に上がる年、母が親戚の家で火事に巻き込まれ急死。父の要吉は明治維新後に財を成した檜垣澤商店の当主で、母はその妾だった。その要吉も卒中の発作で倒れ、家に現れなくなっていた。かな子は横浜にある広大な檜垣澤家の屋敷に引き取られ、寝たきりの要吉の世話をしながら学校に通う。芸者だった母から処世術を学んだかな子は、腹違いの姉や本妻のスヱの機嫌を損ねぬよう立ち回る。
そんなある日、屋敷の蔵から出火。消火後、蔵から継姉・花の夫・辰市の遺体が見つかる。火事は辰市の失火として処理されるが、2年後、かな子は元女中のトヨから出火前に辰市はすでに蔵の中で死んでいたと教えられる。
女系一族の中で密かに野心を育てながら成長する少女を主人公に描くミステリー巨編。
(新潮社 1210円)