「安全に狂う方法」赤坂真理著
「安全に狂う方法」赤坂真理著
酒やギャンブルなど一定の行為にハマる状態を一般に依存症と呼ぶ。症状さえ消えれば回復だと思われがちだが、その要因となった緊張感や不安などの生きにくさが解消されない限り、本人を苦しめ続けることも少なくない。著者は、毎日欠かせなかった飲酒や薬の過剰摂取に苦しみ、ついには愛する人を殺すか自分が死ぬかだと思うほどの感情に襲われて、セラピストのもとに駆け込んだ。本書は、著者自身の心のとらわれ体験と、そこからの解放の軌跡を赤裸々に描いた書だ。
著者は「わかっているのにやめられない」状態を、何かに「依存」するかしないかではなく、離れることのできない「アディクション」(固着・執着)として捉えた。対象から自分を引き離す転機となったのは、セラピストの「あなたには、安全に狂う必要が、あります」という言葉だ。その後、ダイナミック瞑想、石牟礼道子の「苦海浄土」などとの出合いを通じて、生きにくさを安全に別なものに転換する手段を発見する。
固着した行為は、生きる上で感じた痛みを緩和するための「セルフ緩和ケア」であるという指摘にハッとさせられる。 (医学書院 2200円)