「あの夏が飽和する。」カンザキイオリ著
「あの夏が飽和する。」カンザキイオリ著
千尋は、13年前、中学のときに自殺した交際相手の流花が忘れられない。ある日、同僚から告白され、勢いで彼女を抱いた千尋の中で流花の思い出が強烈に蘇る。
女性と肌を重ねれば流花を感じられることを知った千尋は、出会い系アプリで一夜限りの相手を探し、「いるか」というハンドルネームの大学生と会うことに。しかし、彼女は高校生で、本名が瑠花だと分かる。瑠花は、何もせずに自分を抱きしめて一晩中泣き続ける千尋に拍子抜けする。
父子家庭で育った瑠花は、年上の男性に抱きしめられることで心の平穏を保ってきた。しかし、動画が拡散され窮地に陥る。そんな彼女の前に千尋が大きなバラの花束を持って再び現れた。
13年前の琉花と千尋の逃避行を描いたスピンオフ作品も併録した青春サスペンス。
(河出書房新社 858円)