著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK朝ドラ「なつぞら」の草刈正雄の存在感は特筆モノだ

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 朝ドラ「なつぞら」がスタートした。第1週について言えば、上々の滑り出しである。初回の冒頭で、18歳のヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)が宣言する。これは「アニメーター」として歩んだ自身の半生の物語であると。続いて昭和20年3月の東京大空襲がアニメで描かれた。さらにタイトルバックも朝ドラでは珍しいアニメ仕立てだ。ドラマ全体の骨格がわかる見事な導入だった。

 主な登場人物たちも好印象だ。東京から北海道十勝にやって来て戸惑う、なつ(子役・粟野咲莉)。なつの父親の戦友だったことから、彼女を引き取った柴田剛男(藤木直人)。「新たな家族」を迎え入れようと努める、妻の富士子(松嶋菜々子)。そして富士子の父で、開拓1世の泰樹(草刈正雄)などが、それぞれの人物像を大仰な芝居を排して的確に演じている。

 中でも大河ドラマ「真田丸」を思い出させる、草刈の存在感は特筆モノだ。周囲に溶け込もうと苦心するなつに向かって泰樹が言う。「おまえなら大丈夫だ。だから、もう無理に笑うことはない。謝ることもない。堂々と、ここで生きろ」。これは1週目のヤマ場であると同時に、このドラマの精神を象徴する名場面だ。

 また安田顕、音尾琢真、戸次重幸ら北海道の演劇ユニット「チームナックス」の面々も好演。広瀬の本格的な登場はこれからだが、現在の子供時代も大いに楽しめる。

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