追悼・大林宣彦監督 貫いた反戦平和とダンディズムの精神
「いまが平和なんて、大嘘。現実の世界はいつもアンハッピー、平和だったことは一度もない」
新作公開予定日の10日に82歳で亡くなった映画監督の大林宣彦さんは晩年、そう繰り返した。
広島県出身の戦中派で、7歳のときに敗戦を迎えた。
やがて映画好きの父親から譲り受けた8ミリカメラを手に上京し、反戦と平和への思いを込めて作品を撮り続けた。
肺がんのステージ4、余命3カ月と診断された翌2017年、戦争3部作の最終章「花筐/HANAGATAMI」公開時に収録された日本映画専門チャンネルでの鼎談では、こう言っている。
「映画はね、ハッピーエンドというのが戦後、僕らの時代だったんです。最後のジ・エンドを、ハッピーエンドと読んでいた。どんなに悲しい、つらい物語であっても、最後は都合よく終わっていく。そして、現実もそうなるんだと信じたんですね。世界のどこにもハッピーエンドなんかない。自分たちは絶えず不幸で、傷つけられている。しかしその現実をそのまま受け入れてしまっては、人間社会はどこまでいってもアンハッピーのままじゃないか。僕たちは穏やかな幸せ、平和な日々を心から願っている。願っていれば必ずやそれは訪れる。そう信じて、平和といういつか大嘘をたぐり寄せる。そんな政治や経済ではできない役割、美しさ、心に焔をともす力が映画にはある。嘘から出たまことという偉大な文化です」