【寄稿】「イカゲーム」はなぜ世界中でヒットしているのか?(北島純)
孤島で繰り広げられるデスゲームの描写は凄惨だが(子供の観賞は推奨できません)、登場する巨大人形や緑色ジャージーとピンク色防護服といったシュールな描写が逆に、ゲームの白昼夢性と同時にリアル感を浮き彫りにする。その映像の美しさは2019年にカンヌやアカデミー賞を席巻した同じ韓国映画「パラサイト 半地下の家族」に匹敵する。心優しき中年失業者の悲哀を演じたイ・ジョンジェ、エリートの傲慢さを捨て切れない元証券マン役パク・ヘス、暗い過去を背負う脱北者役チョン・ホヨンといった俳優の演技に引き込まれ、イ・ビョンホンや「トッケビ」でおなじみのコン・ユも光る。
「イカゲーム」は韓国社会における残酷なまでの経済格差を描く作品だ。しかしそれだけでなく、超富裕層の狂気も含めて「資本主義という名のマネーゲームの非人間性」を描き切ったからこそ、韓国だけでなく世界中で喝采を浴びて大ヒットしているのだろう。この秋必見のドラマだ。
▽北島純(きたじま・じゅん)社会情報大学院大学特任教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。国会議員政策秘書、駐日デンマーク王国大使館上席戦略担当官を経て、現在BERC(経営倫理実践研究センター)主任研究員、東洋学園大学大学院非常勤講師。専門は戦略的パートナーシップ、情報戦略、腐敗防止。