「三十郎大活劇」くしくも今回の演出作品は混迷の時代とリンクしてしまった
星屑の会「王将」が無事千秋楽を終え、1週間後にはPARCO主催の「三十郎大活劇」が幕を開ける。稽古期間から本番の間、2つの稽古場を往復し、起きている間はずっと芝居に関わっていた。もちろん役者と演出の掛け持ちなど褒められたことではないのは分かっているが、やむを得ない事情もある。それでも一を聞いて十を知る優秀なスタッフと、何よりも芝居が大好きなプロの役者さんたちのおかげで、日に日に面白い芝居に仕上がってきている。
昭和初期サイレントからトーキーに移り変わる過渡期の映画界。名もなき大部屋俳優から一夜にして大スターになる紅三十郎と、同じく助監督から監督に昇進していく岡村淳平の青春活劇。しかし日本が戦争に向かって突き進み始め、娯楽である映画は規制され、プロパガンダの国策映画を作らざるを得なくなる。明るい娯楽活劇かと思いきや苦く切ない結末に。
劇作家の鈴木聡さんがラッパ屋という劇団に1994年に描いた反戦劇風作品。それが、コロナ禍の中、さらにロシアがウクライナに侵攻するまさに今、上演されることに時代の不思議を感じる。