「PLAN75」早川千絵監督の才能を激賞 そして「倍賞千恵子を見るための映画」と断言できる
倍賞千恵子が主演し、今年5月の「第75回カンヌ国際映画祭」でカメラドール特別表彰を受けた早川千絵監督の長編デビュー作「PLAN75」がロングランヒットしている。9月には「第95回米国アカデミー賞」国際長編映画賞部門の日本代表(前回は「ドライブ・マイ・カー」)に決定した同作を見るべく、新宿の劇場に足を運んだ。
結論を言うなら、今年見た日本映画の暫定ナンバーワン。上映中、自分の心が動く音がいくたびか聞こえた。傑作に触れる感動と新星の登場に立ち会う興奮がない交ぜになり、観賞後は上映時間112分より長い時間を感情の整理に要したほどだ。
早川監督は東京生まれ、現在46歳。高校卒業後、映画監督を志して米国留学したものの、育児や企業勤務による長い中断を経て40代で監督デビューした異例のキャリアの主だ。「PLAN75」は監督自身による脚本がなんといっても圧巻。ストーリーも、セリフも。舞台は未曽有の少子高齢化社会となった近未来の日本。超高齢化問題の解決策として、国の主導と支援のもと満75歳からは安らかな死を選択できる制度「プラン75」が施行された架空の社会を描く。同プランを歓迎する風潮が世間を覆い、老若男女あるいは在日外国人はそれぞれの立場でプラン75に翻弄される。