著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

小泉今日子さん、和田靜香さん、そしてぼく。意思表示を辞さない50代3人の言葉に耳を傾け、見届けてほしい

公開日: 更新日:

 この連載が始まってまだひと月も経たぬ一昨年の9月にとりあげたのが、東京・下北沢の「本屋B&B」。本(Books)とビール(Beer)を意味する店名通り、酒やソフトドリンクを片手に読書やトークイベントを楽しむことができる本好きの天国だ。

 そのとき同店で行った、日本のポピュラー音楽文化の特徴を論じた『「未熟さ」の系譜』(新潮社)の著者・周東美材さん(現在、学習院大法学部教授)との公開対談は、いま思い出しても相当スリリングな内容だった。なかでも、朝鮮戦争に米国兵として従軍した故ジャニー喜多川氏が、その後日本の再軍備推進を目的とする機関の職員を務めていたという事実には驚いた。周東さんが淡々と語る「ジャニーズ前史」にぼくがどれほど興奮を覚えたか。それを書きとめたコラムは予想外の反響を呼んだ。今年初頭に出版した『おれの歌を止めるな ジャニーズ問題とエンターテインメントの未来』(講談社)にも収録したので、アレかと膝を打つ方もいらっしゃるかもしれない。

 強調したいのは、公開対談が行われた22年9月はまだ「ジャニーズ性加害問題」という言葉さえ生まれていなかったこと。ぼくがその問題について本格的に声を上げはじめたのは、翌23年3月に英BBCで放映されたドキュメンタリー『プレデター(捕食者)』を観てから。本業の音楽にたとえるなら、B&Bでの周東さんとの対談でふれたジャニーズの話は、正規リリース前にライブで一度だけお試し的に披露したデモ楽曲のようなものか。

 昨年末、『推す力 人生をかけたアイドル論』(集英社)を上梓したばかりの中森明夫さんとB&Bで行った対談では、彼がアドリブで繰りだすきわどい質問にぼくは狼狽えまくったものだ。だが今となっては、自分で原稿を書くだけでは表現しきれない何かを引き出してもらえたと心から感謝している。そして、これらを総じて「ライブならではの醍醐味」と呼ぶことへの躊躇は露ほどもない。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動